食物繊維に該当する難消化多糖類は様々あります。大麦では図1に示しましたように、大麦穀粒の部位別で見ても色々な成分が含まれています。図1では穀粒の部位のうち胚乳部分にβ-グルカンが多く含まれています。大麦の健康効果がとくにこのβーグルカンに強いことがこれまでの研究から明らかにされています。
β-グルカンを特異的に染色させたのが図2です。胚乳部分の細胞の細胞壁にかなり特異的にβ-グルカンが存在していますが、外皮や糊粉層には少ないことが分かります。米や小麦では胚乳の細胞壁が薄く、β-グルカンも少なく、主たる成分はセルロースであるのが特徴です。植物性食品に多いセルロースはグルコース(ブドウ糖)がβ-1,4結合でつながっていますが、β-グルカンはβ-1,4結合とβ-1,3結合が一定の割合でつながっているものです。セルロースは不溶性ですが、β-グルカンは水溶性です。図3にβ-グルカンとセルロースの化学構造を示しました。
なお、「日本食品標準成分表」では食物繊維は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維(水に溶けない食物繊維)に区分して掲載されていますが、β-グルカン含量については掲載されていません。大麦のβ-グルカン含量は個別の研究者や組織が発表しているものしかありませんので、全国精麦工業協同組合連合会が国内に出回っている大麦について分析機関で測定したデータを表1に示しました。また、大麦にも米と同様にうるち種ともち種があります。一般的にもち種ではβ-グルカン含量が多い品種がありますが、うるち種でもβ-グルカンが多い品種もあります。
表1 国産大麦のβ-グルカン含量
産地 | 年産 | 麦種 | 品種名 | β-グルカン含有量(%) (無水物換算値) |
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福井県 | 26年 | 六条皮粳 | ファイバースノウ | 4.7 |
富山県 | 26年 | 六条皮粳 | ファイバースノウ | 4.2 |
石川県 | 26年 | 六条皮粳 | ファイバースノウ | 4.5 |
長野県 | 26年 | 六条皮粳 | ファイバースノウ | 5.0 |
栃木県 | 26年 | 六条皮粳 | シュンライ | 5.7 |
群馬県 | 26年 | 六条皮粳 | シュンライ | 6.0 |
宮城県 | 26年 | 六条皮粳 | シュンライ | 5.3 |
宮城県 | 26年 | 六条皮粳 | ミノリムギ | 5.5 |
新潟県 | 26年 | 六条皮粳 | ミノリムギ | 6.5 |
香川県 | 26年 | 六条裸粳 | イチバンボシ | 4.1 |
愛媛県 | 26年 | 六条裸粳 | マンネンボシ | 5.2 |
愛知県 | 29年 | 二条裸粳 | ビューファイバー | 12.3 |
宮城県 | 28年 | 六条皮糯 | ホワイトファイバー | 6.8 |
香川県 | 29年 | 六条裸糯 | ダイシモチ | 5.6 |
福岡県 | 29年 | 二条皮糯 | くすもち二条 | 6.1 |
茨城県 | 29年 | 二条裸糯 | キラリモチ | 7.1 |
埼玉県 | 29年 | 二条裸糯 | もっちりぼし | 7.6 |
愛知県 | 29年 | 二条裸糯 | ワキシーファイバー | 13.5 |
試験機関:(一般財団法人)日本穀物検定協会
成績書番号:第14-C-00-337-02号,第17-K-00-1455-02号,第18-K-00-176号
(注1)本分析結果は精麦工場等から収集した原料サンプルを全国精麦工業協同組合連合会で歩留60%に搗精し、(一般財団法人)日本穀物検定協会にて分析したもの。
(注2)福井県産ファイバースノウについては5つの集荷地域のサンプル分析結果を平均した値である。
大麦は押麦や米粒麦などに加工されるほか、粉にして麺や菓子・パンなどに加工されています。また、大麦からβ-グルカンを抽出して健康食品などとして利用される場合があります。その加工・精製過程は図4に示しました。