平成28年国民健康・栄養調査の結果から20歳以上の日本人成人の平均的な食生活における食物繊維の摂取量は、ほぼ1日あたり、4.3gほど不足しています。こうした方々は恐らく日常的に便秘がちではないでしょうか。現在「日本人の食事摂取基準」での食物繊維の目標量は、成人男性では1日20g以上、成人女性では1日18g以上摂取することが推奨されています。そこで、男女を平均して、1日の目標量を19g以上として以下のように計算してみました。日本人の食物繊維の供給源として大事な食品群は野菜、果物ですが、これらも充分に摂取されていません。野菜や果物をしっかり摂取している人たちではがんやその他の生活習慣病、寿命などにもよい結果が出ていますから、できれば厚生労働省が推奨している、野菜は350g、専門機関などが推奨する果物は200gをまず確保しましょう。
図1では平成28年の国民健康・栄養調査の野菜、果物の摂取量、それぞれから摂取している食物繊維量から望ましい野菜、果物の摂取量に増やしたとき、食物繊維が増える量も計算してみました。野菜や果物を望ましい量摂取しても、食物繊維の目標量には至りません。日本人の平均米摂取量はほぼ中茶碗2杯くらいです。そこに不足する食物繊維を補う大麦の量を、野菜、果物を望ましい量とした場合と、現状の不足のままとした場合とについて計算しました。なお、現在市販されている押麦の食物繊維含量は100g当たり9.6g、米粒麦の場合は8.7gですので、両方の場合の必要量を計算してみました。
図1 食物繊維摂取を確保するには大麦、野菜、果物をしっかり摂る
野菜・果物も摂って | 大麦だけで | |
---|---|---|
大麦から摂りたい 食物繊維量: |
1.7g | 4.3g |
大麦摂取目標量: | ||
押麦の場合 | 17.7g | 44.8g |
米粒麦の場合 | 19.5g | 49.4g |
麦飯なら (中茶碗2杯なら) : |
||
押麦の場合 | 13%(*) | 32%(*) |
米粒麦の場合 | 14%(*) | 35%(*) |
*麦飯中の大麦の混合割合を示しています。
なお、図1の食物繊維の摂取量は食事摂取基準における目標量の最低量で計算していますから、ここにあげた大麦の摂取量はこれより高めにすることが望ましいと思います。
食物摂取量と排便習慣の関係に関するこれまでの人での研究から、現在の食事摂取基準を充足していれば、毎日の排便が確保できると思います。日本人での研究や、欧米での研究から判断すると、1日150gから200gくらいの排便量が毎日あることが望ましいと思われます。1日キュウリ2本から3本が目安です。
機能性表示食品や欧米先進諸国の健康表示から判断しますと、1日当たりβ-グルカンを3g以上摂取することが望ましいと思われます。大麦のβ-グルカン含量は大麦の種類によって異なります。機能性表示食品では一定のβ-グルカンが摂取できるように設定されていますので、これを利用するのが確実です。現在わが国で一般的に販売されている大麦ではβ-グルカンは100g当たりでは3gくらいから多いものでは10gに近い品種もあります。商品に表示しているものもありますので、確認して利用して下さい。1日に大麦を50gから100gくらいの摂取が望ましいと思います。
食後の血糖値の上昇を抑制したい方の場合は、毎食に大麦を摂ることが必要です。ただし、継続して大麦を摂取していると、大麦を食べた後の次の食事では血糖値が上がりにくいことが確認されていますので、1日2回は必ず大麦を摂取することが推奨されます。そして1回の食事からのβ-グルカンは2gから3gを確保することが必要です。すなわち、毎食大麦として50gから100gを摂ることが必要と思われます。
なお、糖尿病学会が発行している「食品交換表」第7版では、麦飯が推奨されています。