メタボリックシンドロームの診断基準は以下の通りです。また、腹囲の測定条件は図1に示しました。
メタボリックシンドロームの診断はまず腹囲をはかり、それが基準を超えている場合、さらに血中脂質、血圧、血糖に関する基準の3項目のうちから2項目が該当すると、メタボリックシンドロームと診断されます。
項目 | 血中脂質 | 血圧 | 血糖 |
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基準 | 高トリグリセリド血症 150mg/dl以上 かつ/または 低HDL コレステロール 40mg/dl以下 |
〇収縮期血圧値 130mmHg以上 かつ/または 〇拡張期血圧値 85mmHg以上 |
空腹時高血糖 110mg/dl以上 |
基準としている指標は個別に対応するだけでは十分な改善はみられず、相互に関連があるために全体的な改善を目標として取り組む重要性が認識されるようになりました。
大麦の有効性成分であるβ-グルカンは、ここに示しましたいくつかの項目に効力を持っていることはこのホームページの中で紹介いたしましたが、特にここでは腹囲、体重、BMIに対する効果について取り上げました。日本人男性と女性47名について3割の麦飯を12週間、1日2回摂取することによって、腹囲の有意な低下と体重とBMIへの低下傾向が報告されています(図2)。同様の日本人男性による5割麦飯、12週間摂取の試験では内臓脂肪の低下が認められていますが、いずれの実験でも同時に行われた白米摂取のグループでは効果は認められていません。
他方、実験動物では大麦の投与によって内臓脂肪の低下とともに、脂肪細胞が小さくなることが観察されています。人の脂肪は体内の各処に分布していますが、とくに腹部に大量の脂肪を蓄積している状態では、各種の生活習慣病発症につながるようです。脂肪は脂肪細胞に蓄積されていますが、体内の脂肪細胞数は成人になると極端な肥満でないかぎりほぼ一定です。肥満になると脂肪細胞が脂肪を蓄えて大きくなります。
大麦の血糖値や食後の満腹感に対する持続効果などから考えますと、継続して大麦を摂取することによって体脂肪、とりわけ腹部脂肪(内臓脂肪)の蓄積の低下の可能性は十分に考えられます。現状では大麦の腹部脂肪に対する効果はまだ多くの研究結果は発表されていませんので、今後の研究蓄積が期待されます。
一般に食後の血糖値が高くなるとインスリンが分泌され、グルコースは体内の細胞に取り込まれていきます。この時、体が多くのエネルギーを必要とする状態であれば、グルコースはエネルギーとして消費されます。しかし、エネルギーとしての必要性がない場合は脂肪として貯蔵されます。食後の血糖値が急激に高まったり、必要以上のグルコースが体内に入り込むと脂肪に変換される量が多くなります。食後の血糖値がゆっくりと上昇すれば、体内の細胞はエネルギーとして利用することができます。このホームペ-ジの別の項でご紹介しますが、大麦の摂取は満腹感が持続し、空腹感が起きにくいことも示されていますので、このことは食事摂取量を抑制して過剰なエネルギー摂取になりにくく、肥満予防につながると思われます。